北極星があるのであれば、南極星もあるの?
天球に興味を持った方であれば、こんな疑問を持たれる方もいらっしゃるかもしれませんね。
これについては、地球の自転軸は地球の南北に延びていますので、当然、天の北極とは反対の方向に天の南極が存在します。天の北極付近にあるものを北極星と呼びますよね。ということは、天の南極には南極点という星があるはずです。
こちらの記事では、南極星はあるのか?ということについて焦点を当てて話を進めていきます。日本は北半球にあるので、南極星についてはあまり気にかけることもないですが、天の南極には北極星のようなものがあるのでしょうか?ぜひ、お楽しみください。
目次
南極星はあるのか?
地球の自転軸の延長線上に沿って天の北極があり、そこに北極星があるのであれば、自転軸の反対側の延長線上には、天の南極があって南極星があっても良いわけですよね。
まず、「南極星はあるのか?」について結論から言いますと、
南極星に当たる星は現在はありません。
実は、現在の地球の天の南極の場所には、北極星のように地軸の延長線上(もしくは地軸の延長線上の近くに)で等級の高い星が存在しないのです。
南極星に近い星
現在は南極星は存在しませんが、南極星として天の南極に近い星もいくつか存在します。その星とは「りゅうこつ座α星のカノープス」と「はちぶんぎ座σ星」の2つです。
カノープス
まず、ひとつ目の候補である「カノープス」の場合には、現在発見されている星の中では太陽を除けばシリウスに次いで2番目に明るい1等級の恒星なので、等級としては南極星にするには問題ありません。ただ、現段階のカノープスは天の南極からおよそ37°も離れてしまっているので、南極星というにはかなり無理があります。
一応、南を示す星としては目印にすることはできますが、南極星と言うにはちょっと難しいですね。
カノープスは日本から観測するとかなり南の空に見えますので、街の光などがあり、シリウスと比べるとかなり暗く見えてしまいますね……
はちぶんぎ座σ星
もうひとつの南極星の候補である「はちぶんぎ座σ星」ですが、天の南極からは2°ほどしか離れていないので、ほぼ南極星といってもいいような場所にある星です。ただ、こちらも問題なのは星の等級です。
はちぶんぎ座σ星の場合には、等級が限りなく6等星に近い5等星とかなり暗い星であるので、南極星として基準の星にするのには少し物足りない感じのある星です。暗すぎて頼りないんですね(失礼……)
ちなみに、この「りゅうこつ座α星」は現代では一番天の南極に近い恒星ということで「ポラリス・アウストラリス(Polaris Australis)」と呼ばれることもあります(北極星の星の名前はポラリスです)。
>>>北極星の見つけ方!位置は北斗七星からの距離で判断できる
南極星はなぜないのか?
北極星があるのに、なぜ南極星がないのかについては、これは本当にたまたまとしか言いようがありません。現代の時代では、なぜかたまたま南の地軸状に対象となる星が存在しないだけです。
ただ、ここでは「現代では」というように言いましたが、実は過去には南極星と呼ばれるものが存在したんです。そして、この先も南極星の対象となる星が出てくると予測されています。
過去に南極星になった星
- 紀元前3,000年:アケルナル(エリダヌス座α星)
- 紀元前150年:みずへび座β星
将来の南極星
- 西暦14,000年頃:カノープス(りゅうこつ座α星)
なぜ、このように南極星がある時代とない時代が存在するのかというと、これには地球の歳差運動というものが関係しているんです。
地球は自転運動をすると同時に公転運動をして太陽の周りを回っている惑星なのですが、実はこの運動は常に一定で回っているわけではなく、少しブレが生じているんです。ちょうどコマを回したときに、少し揺れて軸がブレたりするときがありますよね。
あんな感じで、地球も自転運動と公転運動を繰り返して行くうちに、地軸の方向か少しブレたりするんです。
歳差運動によって地軸の方向が変わると、それによって地軸の延長線上にくる星もまたズレてきます。そのために、南極星がある時代とない時代が入れ替わりやってくるということなんですね。
ちなみに、南極星が入れ替わる周期はおよそ26,000年周期であると言われています。次に南極星ができるるのはおよそ12,000年後とされているので、現代は南極星のない時代のちょうど真ん中くらいの時代ということになりますね。
この歳差運動のために、実は北極星も時代によって星が入れ替わっているんですよ!
>>>北極星の見つけ方!位置は北斗七星からの距離で判断できる
南極老人星(カノープス)の化身が七福神の中にいた
ここまで、南極星について話を進めてきましたが、実は南極星に近い星である「カノープス」は、南極老人星という名前でも呼ばれています。
北半球では場所によってはなかなか見ることのできない星ということもあって、中国では「カノープスを見たものは長生きを知ることができる」という言い伝えがあることからこの名前がついたんですね。他にも、カノープスが現れた年は良い年になり、見えなかった年は良くないことが起こるとまでされていたほどなんです。住んでいる緯度によって変わってくるだけなのですが、かなりありがたがられる星だったということですね。
そして、南極老人星の化身として地球に降り立った神様がいて、それはあの七福神の中の「福禄寿」と「寿老人」なんです。もしかしたら、北半球では「カノープス」をなかなか見ることができないので、少しでもその恩恵にあやかろうと神様を作ったのかもしれませんね。なんだか面白い話です。
あとがき
南極星についてまとめてきましたが、いかがでしたでしょうか?
現代の時代では南極星と呼ぶに値するような星はないと言うことでした。宇宙にはそれこそ星の数ほど星があるのに(笑)天の南極の位置に明るい星がこないと言うのもまた珍しいですね。逆にこれだけ星があるのに、南極星が存在しない時代に生まれたのは、ある意味ではかなり貴重な時代に生まれたといってもいいかもしれませんね。
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